【相談内容】
特別区の経験者採用試験に向けて職務経験論文等に記載できるようなエピソードを考えているのですが、出てくる話が本当に内容の薄いものばかりで、とても論じる様な内容ではないと感じて頭を悩ませています。
職務経験値の高低の基準は各々違うと思いますが、自分自身の基準で考えると伝えられるようなエピソードがほぼありません。
職務経験の棚卸しの仕方や切り取り方、目の付け所のアドバイスを頂けないでしょうか?
【はじめに】
なるほど。
特別区の経験者採用だけではなく、他の自治体の経験者採用においても同様の疑問、あるいは不安を抱いてらっしゃる方は多いでしょう。
ですので、経験者採用全般を念頭に置きつつ、ご案内をしていきたいと思います。
なお、下記のYouTube動画でも解説を行っているので、併せてご視聴ください。
基準値
まずですね、ちょっと気になる記述が文章の中にありましたので、読み上げたいと思います。
自分自身の基準で考えると、伝えられるようなエピソードはほぼありません
ということなんですけれども、まずですね、職務経験論文のトレーニングをこれから始めていこうという段階にあっては、あんまりその基準値にこだわりすぎないほうがいいと思います。
理由は二つあります。
一つ目、これは何かと申しますと、基準値を高めに設定していればいるほど、トレーニングをしていくのが、嫌になるからなんですよね。
どういうことかと申しますと、これおそらく質問者さんとか見てくださってる皆さんは自分の中で何らかの基準値みたいなものがあって、そこを超えていたらエピソードとして使っていい。
でも、それを下回っている場合には、エピソードとして使うのはちょっとな…っていうことを考えてらっしゃると思うんですよ。
どなたもそういう基準値みたいなものってあると思うんですけれども、それが高く設定されていると、まずエピソード考えるのが、ちょっと嫌になりませんか?
ですよね?
だって基準値が高くなればなるほど、これ突破できてるかなぁ…って考える作業が必要になってくるじゃないですか。
このエピソードは突破しているかな?いや、これはちょっと突破してないだろう…みたいな。
で、それを考えてしまうと職務経験論文のトレーニングを積むこと自体が嫌になっちゃうと思うんですよね。
それってすごくもったいないじゃないですか。
なので、入口の段階、これから始めていこうという段階にあっては、あんまり基準値にこだわりすぎないほうが、結果として職務経験論文の練習、トレーニングを何度も積むことができて実力が上がっていくと思うので、入り口では基準値を気にしすぎないっていうことを推奨したいなというふうに思ってます。
もう一つですね、ちょっと申し上げておきたいことがありまして、それは何かといいますと、多くの方にとっては、この基準値っていうものが、普通の人の目から見たときに高くなりすぎている性質があります。
どういうことかと申しますと、ちょっとこれはね、私自身を例にご案内をしてみたいと思うんですけれども、私は予備校の講師でありますので、人前で講義をするのが仕事なわけですね。
多いときだと、1日9時間だったりとか、人前で話すんですよ。
3時間ひとコマの講義を朝昼夜みたいな形で展開することがあるんですね。
で、これっておそらく多くの人にとっては結構多いですねっていうふうに感じると思うんですよね。
つまり、通常の人類、普通の人たちの基準値からすれば、1日仕事で9時間話すっていうのは、かなり多いことだと思うんですよ。
なんですけれども、私だったりとか、予備校講師として働いている人からすると、9時間というのは確かに多いかもしれないけれども、8時間とか7時間とかね、そのぐらい人前で話すっていうのは通常のことなんですよね。
つまり何が言いたいのかっていうと、自分にとって、働いている人にとっては、基準値っていうのが高めになってしまってるんですよね。
なんでかっていうと、自分にとっては当たり前のことだから。
でも通常の人から見たときに、十分それがすごいっていうことってのはやっぱりあるんですよね。
で、皆さん方も必ずそうなんですよ。
日々の業務、毎日やっているから、基準値がね、これぐらいできて当たり前でしょってなってるんだけれども、通常の人類から見たときにはそれ結構すごいことですよっていうことがたくさんあったりするんですよね。
いずれにせよ、皆さん方が設定している基準値っていうのは、通常の人類から見て高くなっている可能性が非常に高いです。
ですから、最初の段階では基準値にこだわらずにトレーニングをしていってもいいんじゃないのかなっていうのが私の考えですね。
ぜひね、最初の部分ではそこにこだわらずに、とにかくバンバン考えていったりとか、書いていったりとか、そういうことが大切なんじゃないかなというふうに思いますね。
「個人」と「組織」の切り取り方
で、次の話に移りましょう。
質問文の中にですね、職務経験の棚卸の仕方や切り取り方、ということがありました。
どういうふうに自分自身の職務経験を切り取っていったらいいんだろう、みたいなお話ですよね。
様々な切り出し方だったり切り口みたいなものがあると思うんですけれども、ここではね、二つのものを申し上げておきたいと思います。
その二つってのは何かっていうと、個人と組織という切り出し方であります。
どういうことかと申しますとね、基本的には仕事っていうのは、個人単位でやることですよね。
つまり日々何らかの業務が個人レベルで与えられていて、それを日々淡々とこなしていく。
これがまず一つ仕事の内実として存在してますよね。
で、多くの方って、組織に所属して何かの仕事をやってらっしゃるわけじゃないですか。
だとすると、単に個人レベルの仕事っていうのだけではなくて、組織の一員として、チームの一員として、チームの中でどういうことをやっているかっていうのが必ず存在していると思うんですよね。
例えばこれもね、私の例で申し上げますと、私個人レベルの業務っていうのは、もちろんいろいろあるんですけれども、例えば一つには、受講生の前で講義を展開するっていうのがありますよね。
これなんていうのは、まさに個人レベルで何をするかっていうことですから、個人としての仕事っていう話になってくるわけです。
でも組織の一員だったりとか、チームの一員としてどんなことをやっているのかっていうと、例えばですけれども予備校って、校舎っていうのがあるじゃないですか。
で、校舎全体で売上をどうやって増やしていこうかっていうようなお話があり得ますよね。
で、そこには私みたいな講師もいれば、事務局のスタッフとしてね、受付だったりとかいろんなオペレーションをしてくださってる方々がいらっしゃるわけですよ。
そういった、チーム全体として売上をどう伸ばそうかっていうこと、これ当然あり得ますよね。
これって個人としての話っていうよりは、組織の一員として、チームの一員としてどういうことを頑張っていこうかなっていう話になってますよね。
この両方の切り出しをちょっと意識してみて欲しいんですよね。
つまり、ノートでも何でもいいですけれども、個人っていうふうに銘打ったうえで、個人としてどんなことをやっているのかっていうのを、あんまり細かいことを考えずにバーッと書いていく。
そして、隣のページだったりとか別のページに組織とかチームっていうふうに書いた上で、そこでもチームとしてはどんなことやってるのかなっていうことをバーッと書き出していくということですよね。
これはね、今申し上げているのは職務経験論文で役に立ちますよっていう話ではあるんですけれども、面接に入ってからも、ここで整理したエピソードってのは必ず役に立ちます。
なぜかと申しますと、面接に入ってから、個人として頑張ったことなんですか、チームの一員として頑張ったことなんですかっていうふうに、個人とチーム、両方について質問されるからなんですよね。
ですので、こういった形でね、職務経験論文対策として、個人と組織で頑張ったこととか、そういうことを整理しておくのは、必ず先々でも役に立っていきますので、全体の合格可能性を高めるためにも、個人と組織っていう切り出し方、ちょっと意識してみていただきたいなっていうふうに思ってます。
顧客対応のエピソード
それ以外のところ、最後にこういう質問がありましたよね。
目の付け所のアドバイス
っていうことだったんですけれども、つまり、どういったテーマに着目して切り出していけばいいんだろうかっていう、テーマのお話ですよね。
いろんなものがあり得るとは思うんですけれども、ここではですね、職務経験論文でよくあるよねーというようなテーマにフォーカスをして、ご案内をしていきたいと思います。
まず一つ、何かと言いますと、直接の顧客対応というテーマですね。
つまり、自分自身がお客さんを目の前にして、もちろんリアルじゃなくてもいいんですよ、メール越しとか電話越しとかでも全然構わないんですけれども、直接顧客対応しましたっていうテーマ、このテーマでエピソードをいくつか準備してみるといいんじゃないかなって思います。
で、どうしてかって言いますと、例えば皆さん方が市役所だったりとか、区役所だったりとか、ここに入られた場合って、当たり前なんですけれども、直接の住民対応だったりとかをする機会多くなってきますよね。
ですので、職務経験論文でも、やっぱりそういった切り出し方、そういったテーマっていうのは、よく出てくる傾向があるんですよね。
ということを考えてみると、自分は直接の顧客対応をこういう形でやってきた、だから、例えば市役所・区役所に入ってからこういう形でその経験を活かせるであろう、っていうのってすごく自然な流れになってきますよね。
ということでもありますので、ぜひね、自分自身が直接顧客対応しましたっていうエピソード、これをきっちり整理しておいていただきたいなっていうふうに思いますね。
調整・折衝経験のエピソード
二つ目、何かと申しますと、これはですね、調整だったりとか、折衝の経験であります。
何でこれが重要になるのかって言いますと、皆さん方が市役所とか区役所とかに入ったときには、どうしても住民同士の利害対立だったりとかを調整する役割を担うことになってくるから、ですね。
当たり前なんですけれども、地域に住んでらっしゃる方々、利害が完璧に一致することってまずあり得ないじゃないですか。
必ず、ある住民とある住民の利害が対立することっていうのが出てきます。
そういうときに、その利害関係だったりとかを調整していく役割って、割合に行政が担っていたりするんですよね。
もちろんこれは個人レベルの住民と住民の間だけではなくて、住民と企業ということも十分ありうると思います。
もっと言いますと、行政がやりたいなっていうようなことと、住民の利害が対立することもあるでしょうし、行政と企業の間で利害が衝突したり、対立するっていうこともあると思います。
で、そういうこともあるので、やっぱり市役所区・役所に入ったら調整だったり、折衝だったりとかやっていかなくてはいけないわけですよね。
だとすると、そういったことについてのエピソードを整理しておいたほうがいい。
で、この調整とか折衝っていうのは、行政組織の外の人相手だけではなくて、組織の中でも調整とか折衝ってすごく重要になってくるじゃないですか。
組織の中でどういうふうに調整役を果たしましたか?みたいなことって、十分問いとして考えられるものだと思うんですよ。
ですので、自分なりに、調整とか折衝、多分ここではこういうふうにやったなっていうようなエピソードがあると思いますので、それをきっちりエピソードとして整理しておく。
こういう話があったな、ああいう話があったなっていうのを、丁寧にノートにまとめていっていただきたいなというふうに思っております。
トラブル・リスク対応のエピソード
もう一つ、三つ目ですよね。
これは何かといいますと、トラブルやリスクへの対応というところですね。
これは以前の職務経験論文の動画のところでもお話をしたところですけれども、やっぱり職務経験論文のテーマとしては、トラブル対応だったりとか、リスク対応っていうのはかなりよく見かけます。
つまり、よく出てくると。
だとするのであれば、皆さん方が日々の業務の中で、どんな小さなものでも結構です、どういったトラブル対応しているのか、どういったリスク対応しているのか、これはやっぱり丁寧に準備をしておいたほうがいいということになってきますよね。
効率化のエピソード
で、最後に申し上げましょう。
これはですね、ぜひ、効率化というテーマでエピソードを整理しておいていただきたいなというふうに思っております。
で、効率化ってどういうことだよって言ったら、すごくシンプルな話ですよね。
つまり、今の職場では、当時こういう無駄なオペレーションがあった。
無駄っていうレトリックはちょっと使いづらいかもしれませんけれども、ちょっとこういうふうに非効率なところがあって、もっと効率化できるんじゃないかなって思うことがあったんです、と。
で、こういう形で私が働きかけて、その部分の効率化、ちょっとだけでも貢献することができました、みたいなエピソードですよね。
なんでこの効率化っていうところをそこまで押し出すのかっていうと、やっぱり経験者採用試験の論文では、そういったテーマがよく問われるからなんですよね。
で、これはあくまで私の考えですけれども、やっぱり民間企業と行政組織を比べたときって、民間企業の方が効率化っていう観点では優れてると思うんですよ。
だって効率化しないと、企業倒産してしまいますから。
なので、民間で働いてるらっしゃる方々って、やっぱり効率っていうものに対してすごく敏感だなっていうふうに私自身思うんですよね。
両方の組織を体験してみてなんですけれども。
でも、行政組織もこれから財政難になっていく中で、どんどん業務の効率化ってのを図っていかないとまずいじゃないですか。
ですから、テーマとして、とくに民間経験者の方々が受けるような試験においては、職務経験論文の中でも行政の効率化だったりとか、効率化っていうキーワードがよく問われる傾向にあります。
で、これについても、どんなに小さなエピソードでも構いません。
ぜひご自身なりに、これはちょっと効率化できたな、それは個人レベルでも結構ですし、組織レベルのものでも構いません。
どっちでも構わないんですけれども、こういう形で効率化っていうのを実現しました、達成しましたってエピソードはぜひ整理しておいていただきたいなというふうに思っております。
おわりに
さて、ということで、今回申し上げたように、基準っていうものを入り口ではそんなに考えすぎないでねっていうこと。
そしてそれ以外のところでも、いくつかのことを申し上げました。
個人と組織っていう切り出し方を意識してみて欲しいっていうことと、あとは今ほど申し上げたように、直接の顧客対応だったりとか、調整・折衝、リスク対応・トラブル対応ですね。
あとは行政の効率化というふうに、効率化というテーマを意識して、とっかかりとしてトレーニングを積んでみてほしいなと思います。
そのうえで、自分の書き方が妥当かどうかってのが不安なのであれば、例えば特定のテーマ、過去問だったりとかでも構いません。
それで職務経験論文を1本書いてみるじゃないですか?
で、書いてみたうえで、1回プロに添削をしてもらうといいと思います。
プロに添削をしてもらって、この書き方だったらばっちりですね!っていうことだったら、ご自身の基準だったりとか、切り出してきているテーマが適切だっていうことになりますよね。
ですので、そういった形で自分なりに今ほど申し上げたような形で論文を書いてみて、最終的に不安だったらプロの添削を仰いでみるっていうのが一番ベターかなと思います。
ということで、今回は職務経験論文のエピソード云々についてご案内しましたけれども、おそらく論文については、やっぱり経験者採用試験をお受けになる方、不安になる方が多いと思いますので、重ねて質問があれば、またお寄せいただければなというふうに思っております。
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